ティム クリソルド
ミスター・チャイナ―実録・中国に消えた投資マネー
![]() |
ホラー映画のような「中国向け投資ケース・スタディ」 |
米系中国投資ファンドの奮戦記。著者はウォール街出身のアメリカ人と組んでファンドを立ち上げたイギリス人。米国の投資家から如何に金を引き出すかという話も興味深いが、投資先との出会い、投資の決定、トラブルと泥沼のような駆け引き、更にその解決といった一連の流れが複数の事例で紹介される。事例の多くが負け戦なのが切ない。特に印象に残ったのは「最後の闘い」のゴム製造工場経営者のシー。野心の追求のため、手を変え品を変え、著者達に向かってくる様は、ハリウッドのホラー映画を髣髴させる。他にも「天に九頭鳥あり、地に湖北人あり」との諺で評されるモーター工場のチェン。出てくる人物が全て個性的だ。底流に流れる「中華思想」に揺るぎが無い以上、90年代初頭の話とはいえ普遍性を持って迫って来よう。こんな目にあいながら、今も中国に残る著者のタフネスに脱帽。